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   無戸籍児1万人=犯罪の温床 

 国の調査は不十分

 無戸籍児の存在を世に知らしめたドラマ「息もできない夏」の社会的意義は大きい(主演=武井咲、脚本=渡辺千穂、フジテレビ、12年)。

 厚労省07年に児童手当の支給状況を調査した際、227人の無戸籍児が判明した。所在不明児(住民登録があるが所在が不明である18歳未満児)は2908人(14年5月)→1878人(15年6月)→25人(16年7月)と減少しつつあるが、さらなる努力が必要である。

 法務省14年7月に実態調査を始め、15年3月までに567人確認した。無戸籍の理由は「民法772条の嫡出推定回避」が439人(77%)と多い。うち41人は夫や前夫からの暴力(DV)を受けていた。他に「記憶喪失など」が25人(4%)、「母の失踪や育児放棄」が6人(1%)いた。小中学生は142人(25%)であった。その後も調査は続けられ、1403人が確認されたが、うち701人(50%)は今でも無戸籍である(17年7月現在)。

 文科省は、16年3月に法務省が把握した無戸籍児191人(小学生154人、中学生37人)を調査した。未就学期間がある子が8人いた(4.1

)。戸籍取得済みの1人を除く190人のうち、生活保護基準に相当する「要保護」が22人、自治体の支援基準に当たる「準要保護」が55人であり、計77人(41%)が経済的に困窮していた。28人(15%)は生活上の課題があった(ネグレクト、虐待、学校の集金滞納etc.)。45人(24%)は学力や学習状況の課題があった(国語、算数、コミュニケーション能力の欠如。欠席・遅刻etc.)。⇒文科省調査

 読売新聞14年10月27日によれば、住民登録を抹消された子どもは13年度だけで940人いる。無戸籍ではないが、深刻な問題である。

 井戸まさえ(元衆議院議員、民法772条による無戸籍児家族の会代表)は司法統計から次のように推計する。

 出生直後、年2700〜3千人が無戸籍者となる。6分の5は調停・裁判を経て1年以内戸籍に入る。法務省の統計は「出生から1年以上」のみである。6分の1(年5百人)は調停・裁判を経ても戸籍に入らない。したがって、20歳未満の無戸籍児は1万人(5百×20)いる。

 救済を急げ

 法務省は07年、300日ルールがあっても医師が離婚後の妊娠と証明すれば元夫を父親としな出生届を認めるよう自治体に通知した。ただ、離婚後300日以内に生まれる子のほとんどが離婚前の妊娠とされ、通知の救済対象外である。

 無戸籍の救済手続きには、裁判を起こして元夫と父子関係がないことの確認や、血縁上の父との父子関係の確認をした上で、戸籍を取得する方法などがある。実際には、手続きを知らない人が多い上、知っていても裁判費用がないために放置する人が多い。

 明石市は14年10月から無戸籍者に対する教育支援を始めた。小学教諭OBが活躍する。民法772条による無戸籍児家族の会や日本司法支援センター(法テラス)も協力する。

 ※ 外国人に戸籍はない。だが、この頁で問題にしている無戸籍者に外国人は含まれない。12年に入管法が改正されたため、外国

  人は住民基本台帳に載り、在留カードを所持する。

 弱者保護政策の推進 =ジョンロールズ正義論の具体化

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